定年退職を期に長年住んだ関東の千葉県から故郷の香川県の田舎にUターンすることにした。千葉県の住宅をどうするかいろいろ考えたが、結局、手放すことにした。子供が将来住む可能性は小さく、残したとしても、借家にするにはこのままでは古びて改装費用が必要だし、遠方から借り手の不具合対応にタイミングよく応えるためには旅費や不具合修繕費もかかる。そこで引っ越しまでの2,3か月でできれば売却することにした。不動産会社を知り合いやネットで調べ、2社に声を掛け、いくらで売れるか相談した。1社は知人に紹介してもらった会社であるが、住宅を多数建設する著名な会社のグループで築三十数年の我が住宅は資産価値がなく、更地に戻すための撤去費用を土地の評価額から差し引いた値段で買い取るという。見積購入価格は取得価格の約十分の一であった。
私の住んでいた土地は最寄りの駅から直線で1.4㎞で歩くと20分くらいの距離であった。駅から東京駅までは90分程度の近さである。家を出てから2時間で東京駅につく。それほど、近くもないが遠くもない。路線価を調べると若干だが、年々下がっている。国土交通省の全国の任意のエリアの50年後の人口増減の予想を見ると、私の住んでいる場所は75%に人口が減少するという予想であった。東京圏への人口集中が進んでおり、当然、東京から60㎞くらいの我が家のエリアでは人口が増えると考えていたが、そうではなく、むしろさらに距離的には遠い、空港のある成田や郊外型大規模ショッピングセンターが集まる千葉ニュータウンの方が人口増のエリアとなっていた。交通やショッピングの面では成田や千葉ニュータウンの方がアクセスが良いかもしれないが。
もうひとつの不動産屋さんは地元で商売しており、電話すると早速、家を見にきた。この近辺での家の売買の例を話してくれると同時に、強味として、家のリフォームをどこよりも安くできるというので、購入した人に喜ばれているという。いくらの売却価格をつけるかは私の意向を探りつつ、私の思う価格で始めてはどうかという。不動産屋さんは手数料として売価に対する一定の割合を受け取るので、比較的売価に対して寛容であった。そこでその地元の不動産屋さんとサービス契約をした。この家を購入した当時のパンフレットなどいくつか、不動産の基本情報を提供した。そして、家の内外の写真を撮り、家の売買の情報サイトに掲載するという。
情報サイトに掲載してその週内にすぐいくつか問い合わせがあったそうで、週末には見学者を受け入れることにした。若い夫婦で家を探しているらしく、見にきたが、余り詳しくは見なかった。2番目の見学者はすでに不動産をすでにいくつか持っている女性でこの家のカーテンや手塗したしっくいの壁、飾りなど内装を気にいり、細かい質問がたくさんあり、ドアやサッシなど建付けを実際に動かして痛み具合を確認した。私としてはリビングのサッシが動きづらくなっていることを知られたくなかったが、彼女はそれを見つけて、よくある劣化であり、対処方法も承知しているようであった。プロのバイヤーという風であった。その後も見学者はあったが、彼女ほど詳しく見たり、質疑したり、手で確認した人はいなかった。
契約した不動産屋さんは当初、もう少し、様子を見てはどうかと言っていたが、翌週か翌々週には2番目の見学者が具体的な購入意思を示しており、さらに現金で決済をすることができるということでここに決めてはどうかと急に態度が変わってきた。
当初の提示価格よりも少し下げれば、決着するという。引っ越し後に売買するのは移動が面倒なので、少し早いがこの人に売ることにした。そして、不動産屋さんと買主、売主(私)、行政書士が銀行に集まり、不動産の売買契約と振込を行い、鍵の受け渡しなどを決めて1か月ほどで売却手続きを終えた。残りの作業として引っ越しの準備に集中することができた。
今になって思うのは売却価格は近所の不動産の売り出し価格などを参考にしで決めたが、結局、交渉で少し下げることになったので、少し高めに設定しておけばよかったと思う。 交渉の結果として下げた方が買主は満足するだろう。 取得価格の6分の一くらいで売れた。決して、高くはないがよく売れたとも思う。もし、引っ越し先が他県で遠くなければ、急いで売る必要はなかったが、2,3年も長引くとメンテナンスも必要になるだろうから、良し悪しである。もし、不動産を売却するときには一例として参考にされたい。(サイト補助者MM)