日本の年金制度についてその仕組みがどうなっているのかよくわからないが、制度を作った頃の戦後の多くの若い世代が少ない老人を支える構造になっていて、その後の高齢化によって年金制度が維持可能でなくなりつつあるということも時々、聞く。 最近、香川1区の小川淳也衆議院議員の著書「日本改革原案」を読んで問題が深刻であることは理解できた。9月に行われた自民党総裁選では河野候補が年金について問題を指摘し、基礎年金の原資を税金により充てるという意見を出すと他の三人の候補から過去の民主党との議論を踏まえ、その非実現性を指摘され、しかも、現状の年金制度は100年維持可能であり、不安をあおるべからずと攻撃した。結局、河野候補は年金政策で失点したことも加わり、総裁選には敗れた。そこで、年金問題をさらに理解するため、基本となる人口問題を調べることにした。
日本の人口が2010年頃をピークとして減少傾向にある。その原因が少子化であり、2019年の出生率は1.36である。出生率は女性が生涯に産む子供の数の平均であるが、統計的には15歳から49歳の女性の人口が1年間に産む出生数を求めることに相当する。簡単のため、男性と女性の人数を同数として人口ピラミッドから、翌年の出生数を簡易的に推定できる。また、年齢別の男女の1年未満の死亡率がデータとしてあるので、これを使えば、翌年の人口ピラミッドを推定することができる。これを繰り返すことで10年後、20年後、100年後の人口ピラミッドを求めることができる。簡単のため、男女人口が同じとした場合の人口ピラミッドの推移を示す。団塊の世代が今、後期高齢者に入ろうとしているが、この世代がやがて寿命を終えれば、現役世代が高齢者世代を支える年金の問題がなくなると思っていたが、どうも、過去の一時期の問題ではなさそうである。注目すべきは人口減少と現役世代・高齢者世代の比率である。人口減少は需要や消費のマーケットの大きさを表すので、一人当たりのGDPを高めない限り、GDPは連動して減少する。高齢者・現役労働者比率はもうすでに50%前後であり、現役2人で高齢者1人を支えている状況であるが、このまま出生率を1.3前後で推移すると70%まで到達する。すなわち、現役3人で高齢者2人を支えることになる。出生率が1.1まで下がると高齢・現役比率は80%を超えるまでになる。100年維持可能としているが本当に年金制度が維持できるのだろうか。人口減少に対しては出生率は減少速度を決める。出生率1.5-1.1では毎年の減少率は0.8%~1.4%となる。人口が1%前後(実に百万人)減るのでGDPの成長率はマイナス効果が1%くらいあることになる。日本の低成長の理由のひとつはこれである。年金は世代間で支えるので、老齢人口と現役人口の比率が重要である。出生率が現状の1.3で維持できれば、この比率は現状の50%から70%まで高まるが1.1まで下がれば、80%まで上昇する。現役世代の負担は我慢できないくらいに高くなる。負担を減らそうとすれば、結局、年金支給額を減らすことになる。こうなれば、年金生活者の生活がやっていけなくなる。逆に1.5まで改善できれば、最大67%まで高まるがその後は若干下がる。出生率の増大はまさに重要である。子供を育てやすい環境の実現が今後の国の根幹を決めることになるといえる。しかし、これまで実現できないでいる。政治を変える必要がある。(MM)